ここまでで、熱力学第一法則とエンタルピー、熱力学第二法則とエントロピーについて述べてきたが、熱力学にはもう1つ、熱力学第三法則と呼ばれる法則がある。
熱力学第三法則もエントロピーに関する法則である。クラウジウス方式のエントロピー定義では、系を出入りする熱により相対的なエントロピー変化 ΔS は定義されたが、各状態のエントロピーの値 S そのものを決めることはできなかった。これを定めるのが熱力学第三法則である。
熱力学第三法則は
「完全結晶のエントロピーは絶対零度 T=0 において0である」
「完全結晶のエントロピーは絶対零度 T=0 において0である」
として、エントロピーがゼロのときの条件を定義している。
この基準に基づいて求められたエントロピーの値は絶対エントロピーと呼ばれ、T=0K にて S0K=0 になるように$$S_T=S_T-S_0=\int_0^T \frac{C_P}{T} dT \tag{6.4.1}$$のように表される。また標準状態の物質1モルあたりの絶対エントロピーは標準エントロピーと呼ばれ S° と表記される。
またこれらの値を使用して、エンタルピーにおけるヘスの法則と同様に、標準状態の化学反応前後のエントロピー変化、標準反応エントロピーを求めることができる。
例えば$$ν_A A+ν_B B→ν_C C+ν_D D$$ という化学反応があったとして、その標準エントロピー変化 ∆r S°はA~Dの標準エントロピー S°(A)~ S°(D) より
$$∆_r S=ν_C S^\circ(C)+ν_D S^\circ(D)-ν_A S^\circ(A)-ν_B S^\circ(B)$$ のように求められる。