7.2 標準反応ギブズエネルギー


ギブズエネルギー G やヘルムホルツエネルギー A はエンタルピー H やエントロピー S 、温度 T や圧力 P と同様の状態変数であり、系が定まれば値が定まるような量である。また、化学反応に伴うエンタルピー変化やエントロピー変化を計算するために標準エンタルピーや標準エントロピーがあったように、ギブズエネルギーについても、標準反応ギブズエネルギー、標準生成ギブズエネルギーがあり、以下のとおり標準反応エンタルピー、標準反応エントロピー、標準生成エンタルピー、標準エントロピーから計算可能である。

標準反応ギブズエネルギーは、標準反応エンタルピーr と標準反応エントロピーr から

$$\Delta_r G^\circ=\Delta_r H^\circ-T\Delta_r S^\circ$$

となる。これは標準状態の反応物・生成物についての化学反応前後のギブズエネルギーの差である。

標準生成ギブズエネルギーは、標準生成エンタルピーと標準エントロピーから算出でき、

$$\Delta_f G^\circ=∆_f H^\circ-T\Delta_f S^\circ$$

となる。これは基準となる標準状態の元素から化合物が生成する際のギブズエネルギーである。
また、任意の化学反応のエンタルピー変化がヘスの法則により計算できたのと同様、ギブズエネルギー変化r についても計算可能である。すなわち、
$$\nu_A A+\nu_B B→\nu_C C+\nu_D D$$ の r はA~Dの f G°(A)~ ∆f G(D) より
$$\Delta_r G=\nu_C \Delta_f G^\circ(C)+\nu_D \Delta_f G^\circ(D)-\nu_A \Delta_f G^\circ(A)-\nu_B \Delta_f G^\circ(B) $$となる。

例えば個体の金属アルミニウム, Al(s) のS°が28.33 JK-1、気体の酸素のO_2 (g) のS°が205.14 JK-1、また酸化アルミニウム( Al2 O3 (s,α) )*1酸化アルミニウムにはいくつかの結晶構造があり、α, β, γといった記号で区別される。の S° とf とがS°:50.92 JK-1, ∆f H°=-1675.7 kJ/molだったなら、$$ 4{\rm Al}(s) + 3{\rm O_2}(g) \rightarrow 2{\rm Al_2 O_3} (s, \alpha)$$という反応の∆S°とfは$$\Delta S^\circ=+50.92-2\times 28.33-3/2×205.14=-313.45 {\,\rm J/K}$$ $$\Delta_f G^\circ=\Delta_f H^\circ-T\delta_f S^\circ=-1675.7\times 10^3-298.15\times -313.45=-1582.24 {\,\rm kJ/K} < 0$$となる。つまり、標準状態でアルミニウムと酸素が反応して酸化アルミニウムになるような反応は進むことができることになる。

References
1 酸化アルミニウムにはいくつかの結晶構造があり、α, β, γといった記号で区別される。