3.3 混合気体と分圧の法則


空気は主に酸素と窒素を混合した気体である。このように種類の異なる気体を混ぜ合わせた時、容器内のそれぞれの気体の圧力がどのようになるか、法則性が見出されたのは19世紀初めのことで、1801年にイギリスのドルトンによって発見されたのでドルトンの法則と呼ばれている。

ドルトンの法則(または分圧の法則)は、「容器内の気体は他の気体の圧力に影響を及ぼすことがなく、各成分の圧力(分圧)の和が混合気体の圧力となる」という法則である。
つまり、2種類以上の異なる気体(圧力 P1, P2, … )が1つの容器の中にあるとき、その圧力は
$$P_{total}=P_1+P_2+…=\sum_i P_i$$となる。

また、圧力一定で気体を混合すると混合後の体積は元の気体の体積の和になる、すなわち$$V_{total}=V_1+V_2+…=\sum_i V_i$$ということでもある。溶液の場合、たとえば水に砂糖を溶かして水溶液にした場合ならば、溶解後の体積は水の体積と砂糖の体積の和と同じではなく小さくなるが、気体においてはそのようなことは生じないということも意味している。

状態方程式を考えると、温度・体積が決まっているなら圧力は物質量で決まるわけなので、ドルトンの法則による混合気体の分圧は元の気体のモル比で決まるということも意味している。
各々の気体の状態方程式、 $$P_1 V=n_1 RT\\ P_2 V=n_2 RT\\ …$$を足し合わせると全圧の式 $$(P_1 + P_2 + …)V=(n_1 + n_2 + …)RT\\ P_{total} V=n_{total} RT$$となり、各気体の状態方程式をこの式で割ると$$\frac{P_i}{P_{total}}=\frac{n_i}{n_{total}}$$となる。従って、モル分率\chi_i=\frac{n_i}{n_{total}}を使って $$P_i=\chi_i P_{total}$$ と表すことができることもわかる。

この分圧の法則がどうして重要かというと、通常、気体の圧力を測定した時の値は全圧だからである。一方、化学反応では特定の気体の分圧だけが重要となることも多い。そんな時は、様々な方法*1ガスクロマトグラフィーだったり質量分析計だったり。でモル分率を求め、その後ドルトンの法則を使って分圧を知ることになる。

References
1 ガスクロマトグラフィーだったり質量分析計だったり。